敷地情報
浅間山の北東の美しい森林の中にある敷地。
群馬県嬬恋村
敷地面積:約660㎡(約200坪)
計画案① 森の中に浮いた屋根
豊かな森の環境を建物のどこにいても感じられつつ、森の中に調和した建築にしたいと考えた。
全体として細長い平面形状とすると共に、視線の通る高さは建物の四周に水平窓を連続させて生活と森との距離を近づけることを意図した。
建物周囲の腰壁部分は建設時の掘削土による盛り土を行い場外搬出土の削減と、その盛り土部分に植生が這い上がってくることを想定している。それにより、地表面に生える植物達を窓から間近に見ることが出来、より森を近く感じられるのではないかと考えている。
結果として建ち現れる建物の姿は、森の中に浮いた屋根のように見えるだろう。
計画案② 森を感じる筒
住まいには外から見られたくない、プライベートな場所も必要になる。
そんな場所をつくりつつも、いつでも森の環境を感じられる建築を考えた。
大きな筒が斜めに地面に対して突き刺さっており、その底面には寝室等のプライベートな場所となっている。
しかしそこが一本の大きな筒となっていることで、筒の先にある豊かな森の環境を筒の奥のプライベートな場所でも感じられるのではないかと考えた。
結果として建ち現れる建築の姿は、森の中に巨大な筒が突き刺さったような、彫刻的のようにも見えるのではないだろうか。
計画案③ 二重の壁と広間
二重になった壁に囲まれた大きな広間を計画する。
二重の壁のあいだにはキッチンや収納・ベッドなど、くらしの中で必要な機能を詰め込み、真ん中の広間には何もない、がらんと大きな空間としている。
二重壁のあいだにある機能はその部分の仕切りを開くことで、真ん中の広間と一体となって使用することができる。
機能を詰め込まれたそれぞれの部分には大きな窓を設け、それぞれの場面で外の森林を感じられるよう意図した。
それぞれの機能の部屋は広間と一体として使うことを前提とすることで、床面積を小さく抑えている。しかし実際には広間がさまざまな使われ方をすることで、床面積以上に広々としたくらしを楽しむことができるよう意図した。
また、寒冷地への対応として、二重壁が断熱層としてのバッファーの役割を果たすため、広間は快適な環境を担保することができるよう配慮した。
計画案④ 奥行きのある平屋
生活のシーンごとに分節された部屋同士を直列につなぐことで、
暮らしの中に繋がりと奥行きの感覚が生まれないかと考えた。
木ルーバーの寝室・大きな窓のあるLDK・ガラスブロックの水廻りのようにそれぞれに特色のあるゾーンをつくり、それを横断するようにして暮らすことで、例えば神社の参道のように、いくつもの境界を横断していく奥行の感覚が生まれるのではないかと思う。
また、面が重層することで、3次元なのだけれど2次元のような、2.5次元的な現実のリアリティがふわりと遊離するような空間感覚を生み出すことも意図した。
別荘という暮らしのあり方として、どこか非日常性を感じられるということも空間の価値としてあり得るのではないかと考えた。
計画案⑤ 森の中の高架橋
2階に生活の主な場であるLDKや寝室を配置した提案。
敷地は浅間山の麓にある豊かな森の中にある。そんな森の中で2階の高さから見える景色は地上にいる時とは違う見え方をするだろう。足元に茂っていたシダや低木、地面に積もった落ち葉といったものとは距離が離れるかわりに、頭上にあった中高木の葉や枝が手にとれるような距離にくると思う。
そんな森の見え方をいつも感じられるよう、2階の外壁まわりの柱の位置をセットバックさせ、全周を連続窓とした。
また、平面形状はどの部屋からも森が感じられるよう、細長い形状としている。
細長い平面形状であることで、軸線が生まれ、生活の中に方向性が生まれてくるのではないかと思う。その軸線を敷地の間近にある浅間山の方向に向けることで、森と山を感じつつ暮らすことができるのではないかと考えた。
結果として、森の中にある高架橋のような建ち方の別荘となった。
計画案⑥ うずまき平面の家
住まいには外に開かれていたら気持ちの良い部分と、外からは距離を取りたい部分とがあると思う。それをカタツムリの殻のように、うずまき状に並べることで一つの家にならないかと考えた。
外に大きく開かれた掃き出し窓からテラス・リビング・ダイニング・キッチン・寝室といった諸室を順番に並べた。寝室は2階レベルとしてハイサイドライトから採光を確保している。寝室の下部には風呂・トイレといった水廻りをまとめた。そして、これらの諸室を覆うように方形の屋根を架けた。
うずまき状の一続きの空間とすることで、森と一続きの空間でありながら、プライベートな場所をつくっている。